結論からお伝えすると、個人で海外の不動産投資に投資している方は、不動産保有時、売却時も日本で申告義務があり税金を支払う必要があります。
しかし、それはあなたが日本の居住者な場合です。非居住者の場合、必要ありません。
踏み込んだ事を言うと、該当する「日本の居住者」だとしても、税務署にバレずに海外不動産投資として物件を購入・売却を行う方法はあります。
日本の非居住者の場合
非居住者に該当する場合、日本での税金支払い義務はありません。居住国での税制ルールが適用されます。
非居住者として判定されるかは、住所が海外だとしても、国税庁の判断になるので要注意です。
【国税庁ページより】「居住者」「非居住者」の判定ついて
我が国の所得税法では、「居住者」とは、国内に「住所」を有し、または、現在まで引き続き1年以上「居所」を有する個人をいい、「居住者」以外の個人を「非居住者」と規定しています。「住所」は、「個人の生活の本拠」をいい、「生活の本拠」かどうかは「客観的事実によって判定する」ことになります。
No.2875 居住者と非居住者の区分
したがって、「住所」は、その人の生活の中心がどこかで判定されます。なお、一定の場合には、その人の住所がどこにあるかを判定するため、職業などを基に「住所の推定」を行うことになります。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2875.htm#:~:text=%E5%9B%BD%E5%86%85%E6%B3%95%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E5%8F%96%E6%89%B1%E3%81%84,%E3%81%99%E3%82%8B%E3%80%8D%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%AB%E3%81%AA%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82
日本の居住者の場合
日本の居住者は、海外不動産投資での所得であろうと、「不動産所得」として日本の不動産と同じように申告をする必要があります。
収入や経費の計算、減価償却の計算も、すべて日本の税法で考えて計算します。
保有時も日本での申告は必要に?
海外の不動産を所有している場合でも、基本的には日本で申告が必要です。
日本は「全世界所得課税」として知られる課税制度を採用しており、全世界で得た所得に対して税金を課します。このため、日本国外で得た所得についても、漏れなく課税の対象となります。なお、アメリカや中国も同様の全世界所得課税方式を採用しています。
従って、日本に住む個人が海外で所有する不動産から家賃収入を得ている場合、その収入は不動産所得として、日本国内にある不動産と同じように申告する必要があります。収入や経費の計算についても、全て日本の税法に基づいて行われます。
また、海外不動産投資においても、日本国内の不動産投資と同じく、賃貸経営に要した費用は経費として計上することが可能です。賃貸管理費、ローンの支払金利、火災保険料、減価償却費、物件の修繕費、固定資産税などの税金等。
1つの海外不動産を所有するだけでも、「海外の税金」と「日本の税金」という2つの税制度による課税が同じ収益に対して行われることになります。
ですが、こうした二重課税を回避するために、日本での申告時には「海外で支払った税金を日本で差し引きます」という外国税額控除の仕組みが存在します。
売却での利益は日本で納税が必要に?
海外の不動産を売却して利益が出た場合、その収益に対して日本では「譲渡所得(分離課税)」として課税されます。
譲渡所得税は、海外不動産の譲渡益から取得費用や譲渡費用を差し引いた金額が課税対象となります。
また、所有していた期間によって税率が異なり、所有期間が5年を超えているかどうかによって税率が変動します。以下の表を参考にしてください。
- 短期譲渡所得の税率(所有期間が5年以下):所得税30%+復興特別所得税0.63%+住民税9%=合計39.63%
- 長期譲渡所得の税率(所有期間が5年以上):所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%=合計20.315%
所有期間が5年を超えるかどうかで、税率が約2倍も変わることが分かります。したがって、売却タイミングが調整可能な場合は、5年以上の所有期間を目指して売却することで節税効果を得ることができます。不動産を約5年以上所有している場合やその周辺で売却を検討する際には、売却のタイミングを慎重に検討しましょう。
相続・贈与した(する)場合は?
具体的な前提条件は存在しますが、日本在住の日本国民が海外にある不動産を相続したり贈与されたりする場合には、通常通り相続税と贈与税が課税されます。
海外にあるからといって税金が免除されることは一切ないため、この点について注意していただきたいです。
税務署に把握される鉄板ケース
結論から伝えると、海外不動産の購入・売却が税務署にバレるのには2パターンあります。
それらを先にお伝えしましょう。
【低い確率】CRS(共通報告基準)
CRS(Common Reporting Standard、共通報告基準)とは、国際的租税回避対策で非居住者金融口座情報を毎年12月末時点で集計し、CRS加盟国の税務当局間で自動的にその口座情報を交換する枠組みの事です。日本も2018年から加盟しており、CRSに基づく非居住者金融口座情報の自動的な情報交換(Automatic Exchange Of Information、AEOI)を実施しています。
情報交換の対象となる内容は以下の通りです:
-個人情報(氏名、住所、生年月日、居住地国、納税者番号、口座番号)
-収入情報(利子、配当などの年間受取総額)
-資産情報(預貯金、有価証券などの口座残高)
CRS加盟国として日本は現在、100以上の国と地域が加盟しているが、逆に言えば世界の全ての国が加盟しているわけではありません。そして、加盟して実際に情報交換を始めるまでに期間があったり、内容も徐々に調整にされ始めている段階です。なので、海外の資産状況が全て分かるという訳ではありません。
![](https://angou-soukin.net/wp-content/uploads/2023/08/crs-report-1024x762.jpg)
【高い確率】海外送金 国外への持ち出し
日本だけではなく、世界的に銀行は海外送金に対しての規制を強めています。日本からの海外送金には、送金申込書だけではなく、銀行担当者への質疑応答や資料提供は必須になっているので、偽造して行う事は不可能でしょう。
海外からの着金、又は海外への100万円以上の送金、着金については金融機関から国外送金等調書を税務署宛に提出されます。
さらに3,000万円相当を超える海外送金には、支払又は支払の受領に関する報告書を作成し、銀行から日本銀行経由財務大臣宛提出が必要です。 また、外為法により財務大臣の許可等が必要な場合もあります。
これらのプロセスで、海外不動産投資が、税務署にバレてしまうパターンがほとんどでしょう。
Western Union(ウェスタンユニオン)、MoneyGram(マネーグラム)等の資金移動業者を使ったとしても、送金可能額は100万円であり、銀行による同じプロセスを経て、税務署には筒抜けになります。
フライトによる国外への現金持ち出しに関してもです。100万円以上は申告義務があります。
バレずに海外不動産投資を行うには?
選択肢①:日本非居住者になる【正規】
まず第一選択肢にあるのは、移住し、非居住者になる事でしょう。そうすれば、日本からであろうと、海外の銀行からであろうと、海外送金が問題になる事はありません。
しかし、日本国内に法人を有し、事業活動を行う方だったり、住む家族がいる方には難しいかもしれません。国税庁の判断になるので。
選択肢②:現金や暗号資産での売買を行う【グレー】
居住者にとって踏み込んだグレーな方法になりますが、暗号資産や現金で利用する方法です。国によっては、現金、又は極稀に暗号資産で購入が可能な場合があります。しかし、いくつか問題点が出てきます。
1つ目の問題点は、優良物件などを提供する海外不動産デベロパーや仲介会社は、国のルールによって売買に銀行送金又は小切手などでしか認めていない所がほとんどな事。
2つ目の問題点は、税務署に把握されないように多額の現金(購入・売却資金)を国内⇔国外へ移動するのかです。暗号資産(仮想通貨)であれば、取引所での出金及び現地での換金も必要になります。どれもリスクが伴います。
選択肢③:海外法人を設立し、不動産売買を行う【正規】
不動産投資先の国で、会社を設立し、その法人を名義にして不動産の売買を行う方法です。この方法であれば、個人売買では無くなるので安心です。いくつか問題点が出てきます。
1つ目の問題点は、外国人が会社オーナーの場合、法人での不動産購入を認めていない国もある。
2つ目の問題点は、購入の場合、設立した海外法人の銀行口座に、どう多額の現金持っていて入金するか。銀行からは、なぜ海外送金ではなく現金なのか 資金源の証明について様々な質問があります。不正な資金や資金洗浄と疑われた場合、口座凍結される可能性があります。
筆者のアドバイス
キャピタルゲインの為の海外への不動産投資でありながら、居住者として、日本の税制が適用されてしまうとなると、魅力は半減します。
日本のルールはルールです。投資前にしっかり税金対策・節税のプランを練りましょう。
しかし、ルールをくぐるやり方は存在します。
コメント