ハワラ(Hawala)とは? 仕組みや地下銀行(地下送金)との違いを解説

金融機関がマネーロンダリングのリスクに直面していることから、世界中の銀行で規制が強化されています。このような状況の中で、銀行の電信為替や電信送金に頼らない資金移動方法、特に暗号資産や独自の送金サービスが人気を博しています。

特に注目されているのが、「ハワラ(Hawala)」と呼ばれる伝統的な送金サービスです。ハワラは「信用」を意味し、世界中で利用可能な独自の送金網を通じて現金を移動できることが特徴です。このサービスは銀行や他の標準的な送金手段から独立しており、日本ではあまり知られていないかもしれませんが、海外でビジネスを行う方々の間では一定の知名度があります。

しかし、ハワラはその非公式な性質と規制の欠如により、マネーロンダリングや資金洗浄といったリスクに直面しています。この問題は多くの政府や国際機関によって注目されており、ハワラシステムの適正な規制と監督の必要性が高まっています。

目次

ハワラとは何か?

ハワラとは、「信用」を意味し、アラビア語で「割り当て」や「手形」を意味します。8世紀に南アジアで生まれ、今日でも世界中で使用されており、特にイスラム教コミュニティで、資金移動の代替手段として使用されています。ハワラのブローカー間の取引は、約束手形を使用せずに行われ、システムは信頼とハワラブローカーの帳簿のバランスに大きく依存しています。

ハワラは、銀行間の電信為替、電信送金のいずれにも頼らず、物理的な現金の移動がないままお金を送金する非公式海外送金ネットワークを指します。通常の国際送金とは異なり、ハワラダー(またはハワラディーラー)と呼ばれる巨大なネットワークを介して取引が行われます。

簡潔に説明すると、要はWestern Union(ウェスタンユニオン)やMoneyGram(マネーグラム)などの世界的資金移動業者の非公式バージョン(リミッター無し)です。政府からの追跡無し、送金上限無しで現金の海外送金が即可能な匿名性の高いサービスです。

ハワラの特徴

ハワラは、取引の匿名性を提供し、公式な記録が保持されないため、送金の源泉を追跡することができません。また、世界の銀行口座を持たない人々や銀行口座にアクセスできない人々の間での送金を可能にする金融技術であり、世界でも一石を投じています。また、送金先が別の国の場合、公式な手続きに関わる費用や時間を節約できます。

そのため、ハワラネットワークは資本規制や資金の流れに対する制裁が厳しい国でよく使用されています。例えばイランなど金融制裁を受けている国のトレーダーや在外国民は、隣接国に対して支払いを行うためにハワラネットワークを利用することがあります。

ハワラが多くの人々から海外送金の手段として選ばれる理由に下記が挙げられます。

  1. ハワラを介した海外送金の手数料率は非常に低い。
  2. 身分証明書や収入源の開示の義務ではない。
  3. 信頼性が高い効率的な送金システムである。
  4. 現金の物理的な移動がないため、ハワラのオペレーターは公式為替レートと比較して有利な為替レートを提供する。
  5. 銀行が行う膨大な書類作成と比べると、これはシンプルで手間のかからないプロセス。
  6. 使途不明所得を移転する唯一の方法。

「地下銀行(地下送金)」と「ハワラ」の違い

地下銀行(地下送金)とは、日本で一般的な金融制度の法的な規制を逃れて非公式な方法で金融取引や送金を行う組織や仕組みを指します。犯罪組織の資金洗浄や日本で住んでいる外国人や不法就労或いは日本人が資金を家族のいる本国に送金するのに利用されることが一般的です。

ハワラと地下銀行(地下送金)の違いは、違法という点では違いありません。

仕組みでは、ハワラを行うブローカーは、他にも貿易商など実業を営んでいるため、取引での貸し借りを帳簿上で合わせることにより、実際にお金を移動することなく、相殺する方式をとっています。

ハワラの仕組みと事例

Western UnionやMoneyGramを利用した事がある方は、仕組みに関して理解しやすいと思います。それらサービスの非公式版であり、運営に必要ライセンスを取得していないサービスが要はハワラです。

動画、図、事例をイメージしやすいように用意しました。

ハワラの仕組み(動画で紹介 0:15-1:05)

ハワラの仕組み(図で紹介)

米国ドルで送金し、ユーロで受け取る。 ハワラ仲介人Aとハワラ仲介人Bとの間で手数料を除いた金額が帳簿に記載される。
より細かい全体像

この制度はハワラ網のハワラ仲介人の間に約束手形が交換されず、完全に「信用」に頼っている点が特徴です。

送金の履歴は非公式な方法で記録され、その結果として仲介者間で発生する借金が記録されます。そして、仲介者間の借金を返済する際、現金を直接支払う必要はなく、実物の支払いなども選択できます。

仲介者は手数料を徴収する他、公式の為替レートを無視し、独自に設定することで利益を得ています。前述の例において、通常の送金ではAが自国通貨でXに支払い、Mが自国通貨でBに支払います。実際には外貨の直接交換は行われないため、公式な為替レートに従う必要はありません。

ハワラを海外送金の手段と選ぶ理由は、匿名性、迅速で便利であり、銀行よりも低い手数料で可能だからです。この利点は特に、受取国が為替レートを厳しく規制している場合に顕著であり、一部地域では、銀行自体が機能していない、信用できない事もあり、唯一の送金手段となることもあります。また、援助組織も信頼性の高い手段として利用することがあるでしょう。

図と文章説明だけでは分かりにくいかもしれませんので、いくつか事例で紹介します。

事例【知人サポート】: 香港⇒シンガポール USD(米ドル)送金⇒USD(米ドル)受取

目的: 香港に住むジャッキーは 、シンガポールに住むマイケルが手元に20万米ドル(3000万円相当)の現金が届くように送金したい。

問題: 香港の金融機関の規制が厳しく、ジャッキーは入金にも送金処理にも時間が掛かってしまう。またマイケル側の銀行でも引き出しに時間が掛かりそうだ。しかし、緊急性がある本件なので、2日営業日以内にマイケルの手に現金が届くように何とか渡したい。

解決: ジャッキーは、香港のハワラ仲介人であるナーシルに取引内容を事前連絡する。ナシ―ルと合流後、仲介手数料を加えた現金カウントを行い、送金金額と取引詳細(受取人の名前、都市、パスワード)を生成。数時間後にマイケルは、20万米ドルの現金を、シンガポ―ルのハワラ仲介人ムハンマドにパスワードを提示して受け取る。

ハワラ仲介人側で起きた事:
ナーシルは、シンガポールにいるハワラ仲介人であるムハンマドに連絡し、マイケルが正しいパスワードを述べる条件で20万米ドルをマイケルに渡すよう依頼します。ムハンマドはマイケルに対して自分のアカウントからお金を渡し、手数料を差し引いた金額で、ナーシルはムハンマドに20万米ドルを借りることになります。

ジャッキーによって開始され、マイケルが資金を受け取ることで終了されるこの取引は、1日、または場合によってはわずか数時間で行われます。お金は移動せず、ナーシルとムハンマド間で紙の取引記録や約束手形が交換されることはないため、ハワラシステムは信頼、名誉、家族のつながり、地域の関係性に支えられています。

事例【税金対策】: カタール⇒韓国 QAR(リヤル)⇒KRW(ウォン)

目的: カタールで貿易業を営む韓国人フンミンは 、事業利益の200万QAR(8000万円相当)を韓国に持って帰りたい。

問題: 節税目的で立ち上げたカタールの会社なので、何とか現金で持って帰らないといけない。しかし、ハンドキャリーはリスクが高く出来ない。またカタールでもだが、韓国のどこで200万QAR程の高額現金をKRW(韓国ウォン)に通貨両替出来るのか分からない。

解決: フンミンは、カタールのハワラ仲介人であるモハメドに取引内容を事前連絡する。モハメドの店舗で合流後、仲介手数料を加えた現金カウントを行い、送金金額と取引詳細(受取人の名前、都市、パスワード)を生成。フンミンはカタール⇒韓国のフライトですぐに飛び、到着後、7億KRW(大韓民国ウォン)の現金を、韓国のハワラ仲介人キムの店舗にてパスワードを提示して受け取る。

ハワラ仲介人側で起きた事:
モハメドは、韓国にいるハワラ仲介人であるキムに連絡し、フンミンが正しいパスワードを述べる条件で7億KRW(大韓民国ウォン)をフンミンに渡すよう依頼します。キムはフンミンに対して自分のアカウントからお金を渡し、手数料を差し引いた金額で、モハメドはキムに7億KRW(大韓民国ウォン)を借りることになります。

フンミンによって開始され、フンミンが資金を受け取ることで終了されるこの取引は、1日、または場合によってはわずか数時間で行われます。お金は移動せず、モハメドとキム間で紙の取引記録や約束手形が交換されることはないため、ハワラシステムは信頼、名誉、家族のつながり、地域の関係性に支えられています。

事例【海外不動産投資】: 日本⇒マレーシア JPY(日本円)⇒RM(リンギット)

目的: 日本からマレーシアへ旅行中の田中は、マレーシアの不動産を投資目的で購入する事を決めた。良物件を抑える為に、今週中に、頭金である200万RM(6500万円)をマレーシアの不動産デベロパーに支払う必要があり、日本にいる奥さんに金庫にあるお金を海外送金させて間に合わせたい。

問題: カードでは当然払えなく、田中と奥さんの使っているメイン銀行が、海外送金に対してとても厳しい。送金目的を細かく聞かれ、書類の提出を求められている。しかし、資産移転の目的もあり、税務問題もある中で回答しずらい。毎月の分割分の海外送金も同様だと思うと購入を迷う。

解決: 田中は、日本のハワラ仲介人であるサラに取引内容を事前連絡する。奥さんにサラと合流するように指示、合流後、仲介手数料を加えた現金カウントを行い、送金金額と取引詳細(受取人の名前、都市、パスワード)を生成。田中は、200万RM(6500万円)の現金を、マレーシアのハワラ仲介人リーの店舗にてパスワードを提示して受け取る。田中は現金、又は紹介で小切手に変えて支払った。

ハワラ仲介人側で起きた事:
サラは、マレーシアにいるハワラ仲介人であるリーに連絡し、田中が正しいパスワードを述べる条件で200万RM(6500万円)を田中に渡すよう依頼します。リーは田中に対して自分のアカウントからお金を渡し、手数料を差し引いた金額で、サラはリーに200万RM(6500万円)を借りることになります。

田中奥さんによって開始され、田中が資金を受け取ることで終了されるこの取引は、1日、または場合によってはわずか数時間で行われます。お金は移動せず、サラとリー間で紙の取引記録や約束手形が交換されることはないため、ハワラシステムは信頼、名誉、家族のつながり、地域の関係性に支えられています。

ハワラ仲介人とは

ハワラ仲介人は、ハワラ取引を行うネットワーク内のブローカーです。大規模なハワラネットワークが存在する一方で、多くは小規模な企業が運営しており、彼らは通常の実業活動(例えば貿易業や金融業)のかたわらでハワラ取引に従事しています。

ハワラネットワークはさまざまですが、その基盤は完全に「信用」に依存しています。多くの場合、これらの金融グループは家族、村、氏族、種族といった緊密な関係に基づいて形成されています。そのため、不正行為は信用の喪失と共に経済的、社会的な懲罰につながります。これがハワラシステムの透明性と信頼性を保つ重要な要素となっています。

ハワラの合法性と違法性

ハワラの罰則

ハワラ取引は、アメリカを含む多くの国で違法であり、金融規制がマネーサービスビジネスに適切なライセンスを取得し、反マネーロンダリング法を遵守することを求めています。

例えば、インドでのハワラの罰則は次の通りです

  • 違反に関連する金額の3倍の金銭的罰金で、上限は200,000インドルピー(約2,433ドル)です。
  • 違反に関連する通貨、有価証券、またはその他の財産の没収。
  • 罰金が支払われない場合、投獄。

国によっては一部合法

ハワラは、ハワラプロバイダーがアラブ首長国連邦中央銀行に登録され、存在する規制に従う限り、ドバイで合法です。規制があるので、Western Union(ウェスタンユニオン)やMoneyGram(マネーグラム)を超えるメリットはありません。

ハワラは違法なサービスだとという事を理解しましょう。

違法な送金サービスでは、詐欺や盗難での取引失敗など高いリスクが生じます。

ハワラは海外送金の未来?

ハワラは、実際のお金の移動がないままお金を送る資金送金システムであり、多くは非公式で運営されています。文書の記録が不要であるため、お金を匿名で自由に移動できるシステムです。

Business Insiderの記事にて専門家らは、ハワラの使用は必ずしも違法な取引を示唆するものではないと語っています。ハワラは、貧しい国々にとって有益であり、外国で働き、お金を故郷に送る人々が、高額な送金手数料や必要な文書手続きを回避することができるからです。

しかし、ハワラはその非公式な性質と規制の欠如により、マネーロンダリングや資金洗浄といったリスクに直面しています。この問題は多くの政府や国際機関によって注目されており、ハワラシステムの適正な規制と監督の必要性が高まっています。

一方で、デジタル通貨やブロックチェーン技術の出現は、ハワラに大きな変革をもたらす可能性を秘めています。これらの新しい技術は、より迅速で透明性のある取引を可能にし、規制遵守を容易にすることが期待されています。また、ハワラは金融包摂を促進する手段としても機能し、銀行アカウントや伝統的な金融サービスにアクセスできない人々に貴重なサービスを提供しています。

金融の未来においてハワラがどのような役割を果たすかは、テクノロジーの進化、政策の変化、そしてグローバル経済の動きによって左右されるでしょう。この古典的なシステムが現代の金融世界にどのように適応し、変化していくかは非常に興味深いテーマです。

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コメント

コメント一覧 (2件)

  • 海外で貿易事業を営んでいる者です。
    詳しく説明しているサイトが無かったので、とても参考になりました。
    質問なのですが、ハワラでの一般的な手数料は大体いくらくらいなのでしょうか?

    • 尾田さん、コメントありがとうございます。
      仲介人や対象国・通貨によって様々ですが、手数料換算をすると、送金額の5%未満だと思います。

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